造血幹細胞は、「自己複製能」と「多分化能」を持っていますが、この機能性は分化により変化していきます。造血能力を持つ細胞には、一生涯全ての血液細胞を作ることのできる長期造血幹細胞や、ある程度分化が進み、機能が限定的な前駆細胞もあります(図1)[1]。造血幹細胞を治療に用いるには、それらの機能性を評価する必要があります。
造血幹細胞やそれらが含まれる検体の評価には、現在以下の2つがあります。
①造血幹細胞や前駆細胞の細胞表面に発現している分子を評価する。
②免疫不全の動物に実際に移植し、造血が行われるか評価する。
①細胞表面マーカーでの評価
骨髄液など様々な細胞が含まれる検体から、造血幹細胞や前駆細胞を見分ける場合に、それらに特有の細胞表面分子(CD34など)を測定します[2]。この手法では、検体中の造血幹細胞数は予測できますが、実際の多分化能や増殖能は予測しきれません[3]。
②実験動物を用いた評価
造血能力の失われた実験動物に造血幹細胞を移植し、その後、体内の移植由来細胞の数などを測定することで、造血能力を評価します。しかしこの手法は、実験が数か月と長期に渡ることや倫理的配慮などの課題があります。一方で、CFUアッセイは実験動物を使わず、かつ比較的短期間で分化能を評価できます。
CFUアッセイは、1966年に報告された、個々の細胞の増殖および分化能力を測定する一般的な測定法です。より未分化の細胞を播種した場合、自己複製能と多分化能により複数の細胞種が観測できます。一方で、ある程度分化した細胞を播種した場合は、特定の細胞種しか観測できません。このように、形成されたコロニーから細胞の自己複製能と多分化能を評価することができます。
一般的な方法の1つを紹介します。造血幹細胞を、分化・増殖因子を含んだ培地で7〜14日間培養した後に、主に3種類のコロニーを判定します。判定するコロニーは、顆粒球や単球などの前駆細胞からなるCFU-GM、赤血球の前駆細胞からなるBFU-E、それら両方の前駆細胞からなるCFU- GEMMです(図2)。
このため、CFU-GEMMより未分化な細胞を播種した場合、CFU-GEMMはCFU-GMにもBFU-Eにも分化するので、赤血球系と顆粒球・単球系の両方の細胞集団が観測されます(図3)。一方で、CFU-GEMMより分化した細胞を播種した場合、赤血球系の細胞集団もしくは顆粒球・単球系の細胞集団のどちらか一方のみが観測されます[4]。
・CFU- GEMM:Colony Forming Unit Granulocyte-Erythroid-Macrophage-Megakaryocyte
・BFU-E:Erythroid Burst-Forming Units
・CFU-GM:Colony Forming Unit Granulocyte-Monocyte
※分化に必要な増殖因子は、判定したいコロニーや使用する培地により異なる。
光学顕微鏡を用いた手作業によるコロニーのカウントと識別は最も一般的な方法ですが、主観性や変動性が課題です[5]。また、動物実験よりは短期間ではあるものの、実験期間が7〜14日と結果が出るまでに時間がかかってしまいます。そこで現在、半自動装置の開発など[6]、様々な方法が検討されています。
造血幹細胞を医療に応用するには、機能性の評価が不可欠です。CFUアッセイの方法を改善し、造血幹細胞の機能性を正確に測定することで、治療効果の予測が期待できます。
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