弊社は、新規性の高いバイオ技術とデジタル技術を有します。
アンメットニーズの高い領域を中心に今後も疾患フォーカスエリアを拡大していきます。
造血幹細胞に関するバイオ技術を用いて、
提供価値の多様化(発見・診断早期化~治療)を目指します。
造血幹細胞に関するバイオ技術、AI解析などのデジタル技術をそれぞれ単独で用いて価値を生み出すだけでなく、両技術を融合させることで、より高難度な医療課題にソリューションを提供することが可能であると考えています。
造血幹細胞移植の適用対象となる血液がん患者の数は、日本のみならず世界的に増加傾向にあります。これは血液がんの罹患率が、高齢化に伴い高くなっていることが主な要因ともいわれています。
また、造血幹細胞移植は再生不良性貧血や重症複合免疫不全などの難治性血液疾患への治療にも実施されています。
更に新しい方法として、遺伝子編集技術と組み合わせた遺伝子治療への応用も期待されています。例として、Ex vivo法(体外で遺伝子編集を実施)による遺伝子治療では、先天的に血液系・免疫系に疾患のある患者さんの異常な造血幹細胞を体外に取り出し、遺伝子編集技術で修正・正常化し、患者さんに再移植することで治療を行います。
ドナー不足・ドナーからの採取時の負担・HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)の不一致・副作用や合併症のリスク・年齢や健康状態の制限など様々な問題が指摘されていますが、造血幹細胞移植の課題の1つとしてGVHD(graft-versus-host disease:移植片対宿主病)があります。これは、造血幹細胞移植において命に関わる重大な副作用の一つです。
移植された造血幹細胞浮遊液に含まれるドナー由来のリンパ球の一種T細胞が患者の細胞を非自己とみなし、免疫反応(生体防御反応)が起こり、患者の正常細胞を攻撃します。
その結果、皮疹、下痢、肝障害をはじめとした様々な障害が全身に起こり、重症化すると治療が困難で命に関わることもあります。
重症GVHD発症率はHLA適合非血縁者間移植では約13%と報告されています。
GVHDの予防にはT細胞を除去することが有効であり、造血幹細胞が含まれると言われているCD34陽性細胞のみの移植や特定の細胞(TCRαβ細胞)を除去する試みが検討されています。
Recent advance in Hematopoietic stem cell transplantation. T Teshima. Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy, 66(1):3-6, 2020
また、造血幹細胞の供給源として臍帯血などが用いられていますが、このなかには成人に移植するには十分な量の造血幹細胞が含まれていない場合も多く、細胞数が原因で移植を断念せざるを得ない場合もあります。この問題を解決するためには、造血幹細胞のみを体外で増殖させる培養技術を開発する必要があります。しかし、未分化な細胞である造血幹細胞は培養中に様々な細胞に分化することが多く、2020年現在、臨床応用可能な培養技術は未だ報告されていません。(当社調査による)
長期造血幹細胞は造血幹細胞の中でも生涯に渡り、自己複製能と多分化能を有する幹細胞であるため、比較的均一な細胞群のまま移植可能となり、結果としてGVHDをはじめとした重篤な副作用の大幅な低減が期待されます。加えて、治療効果の長期間の持続も期待され、患者の生命予後を大きく改善する可能性があります。
Hoxb5 marks long-term haematopoietic stem cells and reveals a homogenous perivascular niche. Chen JY, Miyanishi M, Wang SK, Yamazaki S, Sinha R, Kao KS, Seita J, Sahoo D, Nakauchi H, Weissman IL. Nature. 2016 Feb 11;530(7589):223-7. doi: 10.1038/nature16943.
https://www.nature.com/articles/nature16943
持続的な造血に関するヒトHSCには数百のバイオマーカーがあり、その中からヒトLT-HSCを選択的に単離することは非常に難しいものでした。
そこで、当社ではAI技術とin vitro機能試験を組み合わせることで、持続的な造血に関するヒトHSCの数百のバイオマーカーからヒトLT-HSCを選択可能なバイオマーカーを同定し、LT-HSCを濃縮することに成功しています。
本技術は、LT-HSCのみならず、その他様々な希少細胞の同定・単離に応用可能であり、さらに当社独自の技術を融合させた次世代型希少細胞同定・単離技術の開発を行っております。この技術のもたらす未来は、個別化医療や希少疾患・難治性疾患を含む多くの疾患の理解や治療法の開発を加速化させる基盤技術となります。
更に、この濃縮したLT-HSCを、当社で開発した培養液(詳細はこちら)を用いて生体外でも分化させないまま培養・増幅させることで、新たな造血幹細胞移植法を開発しています。
先天的に異常のある造血幹細胞を生体外に取り出し、当社の保有する技術を活かしLT-HSCの単離、及び生体外で増幅したのち、必要な遺伝子を導入し、再度患者さんに移植する遺伝子治療の技術も開発しています。
対象疾患としては小児の難治性希少疾患を想定しております。
また、これまでに約6000種類を超える遺伝性疾患(その多くが難治性希少疾患)が報告されており、本技術開発により、今後より幅広い難治性希少疾患への拡大を目指しております。
前述の通り、生体から取得できる造血幹細胞の数は非常に少ないため、造血幹細胞を医療の現場でより広く活用するためには、生体外で細胞を培養して増殖させる必要があります。しかし、生体外での培養条件下では、造血幹細胞は増殖とともに様々な血球細胞に分化してしまうという問題がありました。
造血幹細胞の未分化維持と増幅には、アミノ酸が重要な因子であることに着目し、配合を調整することで、LT-HSCを含む造血幹細胞を未分化維持しつつ増幅する培養液の開発に成功しました。 現時点で、最も未分化な細胞である骨髄系前駆細胞由来コロニー(CFU-GEMM)の存在割合を従来細胞培養液よりも高いまま保つことが可能です。
加えて、移植時の免疫反応のリスクを軽減するために、動物性の血清を含まない、植物由来細胞増殖因子を用いた培養液の開発にも現在着手しています。(三菱ケミカルとの共同研究)
当社はCD34陽性血液細胞を用い、体外培養後に造血幹細胞の機能評価として造血コロニーアッセイ(CFUアッセイ)を用い、造血幹細胞を未分化維持しつつ、細胞増幅可能な培養条件の最適化を行ってきました。(詳細はこちら)
これらの知見と、造血幹細胞の培養液における成分の配合に関する経験と血液細胞分析技術やノウハウを活かし、造血幹細胞を単離後、特定の血液細胞群に分化させるような培養液の組成を開発するサービスも提供いたします。
移植に用いることを考慮し、免疫原性の高い血清を含まない培養液組成の構築を目指しています。
当社で保有している造血幹細胞に関する以下の技術とコラボレーションすることで、多様な価値創造を目指すパートナーを探しています。
なお、具体的なコラボレーションは以下を想定しています。
上記以外にも、あらゆる可能性を模索しています。まずはご相談ください。
FiTTEは臨床現場の課題に則した、不妊治療に関する2つの機能(システム)を有しています。
国内において出生児の数は減少しているにもかかわらず、技術の進歩や晩婚化に伴い、体外受精・顕微授精・卵子や胚の凍結保存・新鮮胚移植・凍結胚移植等の技術を用いた生殖補助医療(ART)を用いた出生児の数は増加しており、2018年時点で新生児16人に1人はARTにより誕生しています。(下図)
不妊治療技術が進歩した我が国において、不妊治療はいまや5.5組に1組の夫婦が経験していると言われるほど一般的な治療になりつつあります。2022年4月において、不妊治療の保険適用が拡大されたものの、一部制限があるなど、患者の経済的負担の大きさが問題点として挙げられています。
反復流産の一因とされる胚の染色体異数性については、検査手法としてPGT-A法(Preimplantation genetic testing for aneuploidy)が知られています。
同手法は胚への侵襲が必要であり、加えて妊娠・出産率への影響も懸念され、不妊クリニックでの積極的利用については日本産婦人科学会を含め、様々な議論がなされています。
また、実施費用も高額になる傾向があり、患者負担が大きいものとなっています。
共同研究先のクリニックとアカデミアにて開発した、胚の生育過程特徴量(時点特定、面積算出)から非侵襲的に染色体異数性を判定する手法(Ootsuki et al. Fertil Stertil. 2019)に対して、当社独自開発の画像領域抽出AI技術により人手を介さず自動化するシステムを開発しました。
約百症例・数万枚の画像を対象に後向き観察試験を実施し、医師・胚培養士がラべリングしたタイムラプス動画を教師データとして、画像領域抽出AIモデルを構築し、胚の生育過程特徴量(時点特定、面積算出)の抽出を可能としました。
体外・顕微受精の胚培養のタイムラプス画像をクラウドサーバー上に配置した画像領域抽出AIに接続したソフトウェアに読み込ませることで、染色体異数性判定情報を医師に提供します。
これにより、安価で非侵襲的かつ迅速にクリニック内で検査を行い、必要な情報を提供することができます。(※医師はその他の臨床情報も確認し総合的に判断を行います)
※現在、国内最大規模(症例数)の不妊クリニックと、前向き評価試験を実施中。
[補足]
医療機関内で匿名化データ加工処理を可能とする仕組みも実装済みです。
画像領域抽出AIが出力した結果を胚培養士が補正できる機能も備えます(開発中)。
医療機関内にソフトウェアとしてダウンロードして利用するため、インターネット接続が必要となります。
その他詳細情報は、お問い合わせください。
・引用文献、参考文献:https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(19)30620-X/fulltext
体外・顕微受精をはじめとする生殖補助医療(ART)において、胚の状態がその後の妊娠・出産に重要とされています。
現行の主な方法は、胚移植時に目視で胚の形態を評価するというものとなりますが、胚の生育過程の解析等様々な評価手法が関連学会で議論されていますが、妊娠・出産を予測する確立された手法はまだありません。
胚培養過程のタイムラプス画像を入力し、妊娠・出産可能性を5段階評価した結果を出力する画像解析AIを開発しました。
約2万症例を対象とした後向き観察試験として、胚培養過程のタイムラプス画像と妊娠・出産アウトカムの関連性から胚の生育過程および胚の形態学的特徴量を抽出し、画像解析AIを構築しました。
(RMB 2022 ”A novel system based on artificial intelligence for predicting blastocyst viability and visualizing the explanation”)
体外・顕微受精の胚培養のタイムラプス画像をクラウドに配置した画像解析AIに接続したソフトウェアに読み込ませることで、5段階評価した結果を医師に提供し移植胚の選択を支援可能です。
同ソフトウェアにより、医師による胚移植支援につながります(医師はその他臨床情報も確認し総合的に判断)。
画像解析AIモデルはクラウドに配置し、同ソフトウェアと連携しています。
[補足]
研究用途の解析ソフトウェアとなります。
医療機関内で匿名化加工を行い、データ処理する仕組みも実装済みです。
医療機関内にソフトウェアとしてダウンロードして利用する。インターネット接続が必要となります。
・引用文献、参考文献:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/rmb2.12443
本システムは、悪性血液疾患などに対する造血幹細胞移植に際し、ドナーとレシピエントの組み合わせにおける治療上の課題を解決します。
悪性血液疾患などに対する造血幹細胞移植に際し、ドナーとレシピエントの組み合わせによっては、GVHD(graft-versus-host disease:移植片対宿主病)といった重篤な副作用等が発生してしまいます。
しかし、骨髄ドナーや臍帯血ドナー、末梢血ドナーに関する情報は膨大で、最良な組み合わせを選択するには長い臨床経験が必要で、予後予測を行うことは難しいものであり、臨床経験年数によっては最良の移植ソースの選択に困ってしまう場合も少なくありませんでした。
臍帯血バンクや骨髄バンク等の移植ドナーの情報とレシピエントである患者のデータや前処置情報から、個々のドナー候補に応じた予後のシミュレーションを実施する事で、最適なドナー候補の選択を可能とするコンパニオン診断システムを開発しました。
京都大学グループ病院約2,500症例を対象とした時系列を考慮した機械学習モデルを構築しており、既存手法であるCOX比例ハザードモデルと比較して、1年後のGRFS(再発、副作用の無い生存状態)予測において、精度改善を達成しています。
[補足]
クラウドサーバを介したシステムになっており、医療機関内でソフトウェアとして利用するため、インターネット接続が必要となります。
・引用文献、参考文献
Blood Advances に論文掲載「Establishment of a Predictive Model for GvHD-free, Relapse-free Survival after Allogeneic HSCT using Ensemble Learning」
本システムは、MDS(骨髄異形成症候群)おける診断上の課題を解決します。
MDS(骨髄異形成症候群)は骨髄中の造血幹細胞に異常が起き、正常な血液細胞が造られなくなる病気です。
正常な血液細胞が減少することで、貧血、出血傾向、感染に伴う発熱などの症状が現れます。成熟した細胞になる途中で血液細胞が壊れてしまう「無効造血」や、造られた血液細胞の形が異常になる「異形成」といった特徴が認められます。また、一部の患者さんでは、MDSが進行し「急性白血病」に移行することがあります。
MDSの診断においては、技師が骨髄スメア画像を観察し、血球細胞をそれぞれの形態学的特徴により分類し、統計処理した報告書が利用されています。
しかし、患者あたりスメア画像の約500箇所の観察が必要で、分類対象となる細胞種も30種超と技師負担が非常に大きいことに加え、判定精度も経験に依存していました。
技師による血球細胞分類・計数を迅速化するため、当社では骨髄スメアを撮像した画像を入力し、血球細胞を自動的に検出・分類し、加えて計数する機能を持つ領域抽出AIを開発しました。(※当該プログラムは、疾病の診断、治療、予防を目的としていません)
京都大学医学部附属病院の医師および技師がラべリングした血球細胞を教師データ(約百症例・数万枚の画像)として、血球細胞の形態学的特徴を領域抽出AIに学習させました。
クラウドに配置した領域抽出AIモデルと連携したSaaSシステムであるため、遠隔の医師との相談や、病院内でも離れている医師と技師間で効率よく情報共有することが可能です。
領域抽出AIが出力した結果を技師が補正できる機能も開発中です。
本システムは、細菌感染症における診断上の課題を解決します。
細菌感染症は、早期に菌種を正確に同定し、適正な抗菌薬を処方することが重要とされるが、質量分析器等の高額機器を使わない場合、培養検査等で菌種同定に時間がかかるため、実施しないことが少なくありません。このため、医師・技師による経験に依存(経験的治療)し、適正な抗菌薬処方が行えていない場合があります。
このように、適切な診断をせず、不適正な抗菌薬投与が行われてしまう事で、薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)の発生の一因となっています。
これらの課題を解決する、AI画像解析技術を利用した高精度な菌種推定、ならびにアンチバイオグラム(Antibiogram;抗菌薬感受性率表)と連携した適正抗菌薬の選定を支援するアプリが「BiTTE 」です。
アタッチメントを介して光学顕微鏡にスマートフォンを取付け、スマートフォンのカメラでグラム染色画像を撮影します。その画像をクラウド上にアップロードすることで、菌種の推定結果、及び処方すべき抗菌薬候補を提示します。
菌種推定に関して、約千症例・約1万枚の尿検体グラム染色画像と培養検査による菌種確定結果を学習した画像認識AIモデルを構築し、その推論結果を用いています。
抗菌薬の提案に関して、スペクトラムスコアやWHOのAWaRe分類、市販薬の情報も表示することで、より狭域な抗菌薬の選択が可能となります。
検体対象は現在は尿に限られていますが、今後血液、喀痰にも拡大予定です。
また、染色工程を自動化する医療機器(開発中)と併用し、検体の染色品質を一定に保ち、画像診断精度の安定化を図っています。
本システムは、細菌感染症における診断上の課題を解決し、世界的にも注目されている薬剤耐性問題の解決を目指します。
日本において2016 年に厚生労働省により策定された 薬剤耐性(AMR) 対策アクションプランに代表されるように、世界各国でもAMR 対策が進んでいます。
しかし、新興国では専門医の不足・地域偏在に加え、医療プラットフォームの整備不足等により、グラム染色等による原因菌の同定や適切な抗菌薬の選定などの診断・治療が適切に行えていないのが現状です。
これらの新興国のように、感染症専門医が不足している、あるいは医療プラットフォームの整備が不足している地域に対する解決策として、遠隔での診断支援プラットフォームを構築しました。
本プラットフォームは、感染症診療の診断にお困りのプライマリケア医が、対象となる医用画像をクラウド上に登録することで、世界中どこの診療専門医にであっても読影を依頼することができるサービスです。
患者や検体毎に複数の画像をアップロードすることが可能です。
利用料は、読影依頼単位での従量制となり、読影回答時間を指定することも可能です。
迅速回答や複数の専門家にクロスチェックを依頼する機能も有しています。
当社で保有しているAI、SaaSに関する以下の技術とコラボレーションすることで、多様な価値創造を目指すパートナーを探しています。
なお、具体的なコラボレーションは以下を想定しています。
上記以外にも、あらゆる可能性を模索しています。まずはご相談ください。